ねこの里のはなし

ある日、ねこが農作業から戻ると家にお客さんがいました。
長旅をしてきたようで、疲れきって椅子に腰かけていました。


ねこは、突然のお客さんにびっくりしつつも嬉しくなり、
おもてなしをするために食材探しにでかけました。


あのお客さん、たいそうお疲れの様子だったから、
食事はあたたかいものがいいかもしれない。
でも、魚はあったほうがいいよね。魚おいしいもん。ぼくは魚好きだな。
ぼくが2匹食べるでしょ。で、お客さんに1…2匹あげよう。
喜んでくれるかな。


と、魚釣りをしながら考えていました。


魚とシチューの食材を手に家に帰ってみると、
さっきまで椅子に座っていたお客さんの姿が見えません。


あれ?お客さん?…散歩にでも行ったのかな?
そうだ、今のうちにご飯の準備をしておこう。
帰ってきてご飯ができてたら、びっくりしちゃうかもしれないな。


ねこは、うきうきしながら食事の準備をしました。


シチューの味見をしたところ、これまでにないほどおいしくできました。
ねこは魚の味見をしたくて仕方がありませんでしたが、なんとか我慢しました。


やっぱりお客さんがいるとはりきっちゃうな。
でもちょっと作りすぎちゃったかな。
でも大丈夫だよね、あの人たくさん食べそうだし。
はやく帰ってこないかな。びっくりした顔するかな。
ぼくも誰かとご飯食べるの楽しみだな。



もう食べちゃおう。
シチューってすごくおいしいよね。
魚もおいしいな。あーおいしい。
魚、3匹食べちゃおう。
おいしいな。すごくおいしい。
…おいしい、な…


結局その日、お客さんは帰ってきませんでした。
ねこはまた、いつもの日常に戻っていきました。


おわり